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明日は我が身!自然災害対策を神谷俊一市長に訊く【2024年6月号1面】

2024-06-06
カテゴリ:政治,行政,防災
注目
震度6弱以上の発生確率62%  大災害を想定した千葉市の備えは?
政府の地震調査委員会が2021年3月に公表した資料によると、今後30年以内に震度6弱以上の激しい揺れに襲われる確率が関東で最も高いのは、水戸市(茨城県)の81%、続いて千葉市の62%となっている。千葉市では特に発災直後から72時間の混乱期において、行政職員も被災している可能性に鑑み、「住民自らが生き残るための最低限のことを、自分たちで最優先に行っていく必要」があるとして、地域ごとに避難所運営委員会の設立が進んでいる。こうした市の姿勢は、能登半島地震等で発生した事態を前提としたとき、現実に即した施策であり、防災対策では先進市とも言えるだろう。
そこで今回は、大災害を想定した千葉市の防災対策の現状や「自助」「共助」「公助」の在り方について、神谷俊一千葉市長に独占取材を行った。(取材日・令和6年5月10日)


稲毛新聞(以下・稲)令和6年1月1日時点で、市内の避難所総数272箇所のうち、町内自治会や自主防災組織などが一体となって構成される避難所運営委員会の設立合計数は269で、全体の98・7%を達成とのことで設立が進んでいますが、市としてはどのようなスタンスでしょうか?

神谷市長(以下・神)避難所は地域の事情に合った運営が必要なため、地域で立ち上げていただき、市はそれを支援しています。もちろん発災時には区災害対策本部から派遣された職員も避難所の立ち上げに駆けつけますが、大規模な災害で職員も被災している場合は、避難所開設が大幅に遅れることもありますので、地域の協力でいち早く初動を起こしていただくことが重要と考えています。本年度から避難所運営委員会の活動への補助金を従来の3万円から5万円に引きあげるなど、各避難所運営委員会の活動の活性化を応援し、今後も備蓄品など様々な支援を続けていきます。

稲・防災マニュアルの多言語対応も進んでいるようですね。

神・コロナ禍の3年間でも着実に外国人住民が増え、令和6年3月末時点で市内には3万6千人、人口の約3・7%が外国人住民です。他国の方からすれば日本語は非常に難しいので、やさしい日本語のほか、英語、中国語、韓国語、スペイン語など「外国人のための防災ガイドブック」を市のホームページなどにも掲載し、緊急時どのような行動をしたらいいのか理解していただけるようにしています。これらは日頃から目を通しておくことで、いざというときにすぐ行動できるようにしていただきたいです。

稲・災害時、外国の方にはどのような支援をするのでしょうか。

神・千葉市の国際交流協会と協定して災害時は外国人支援センターを設置し、その際には市民の通訳ボランティアにもご協力いただきます。避難所運営用には、多言語のマニュアルや表示類などを市で作成し、それをベースにして各避難所では地域の実情に合わせて避難所を開設いただきます。

稲・ここ数年、避難所で求められることも変化していると聞きましたが…。

神・はい。近年では、特に感染対策やペット同行避難などが求められ、それに対する様々な案内やマニュアルも必要になりました。他の地域の災害から得た教訓も盛り込みながら、常にマニュアルのブラッシュアップを図っています。

稲・能登半島地震では断水が長期化し、水の確保が重要課題となりました。市の避難所では、飲料水や生活用水はどのように確保していますか?

神・避難所には初期対応として市全体でペットボトル50万本以上を備蓄しています。また、217箇所の指定避難所は、受水槽から直接水を取り出す蛇口を設置し、約200万リットルの水を使えるようにしています。そして58箇所の避難所には非常用井戸、公共施設13箇所には井戸付き耐震性貯水槽があり、それぞれ水を確保しています。さらに災害時に近隣へ水を供給するようご協力いただける防災井戸協力の家が160箇所あります。

稲・それはとても心強いですね。

神・はい。災害時に井戸水を提供してくださる方を随時募集しています。「防災井戸」の持ち主と市が協定を結び、災害時に速やかに活用できるよう「防災井戸協力の家」のプレートを掲示したり、所在地は市のHPでも公表しています。

稲・災害時に機動的な役割を果たす給水車両は市内に何台あるのでしょうか?

神・給水車は千葉市水道局には2台あります。また、県の企業局には13台あり、そのうち千葉市内管轄には3台あります。部分的な断水であれば周辺の自治体から、広域的な断水であれば全国から給水車が応援に来ます。備蓄品のペットボトルに加えて、周辺自治体や水道業者とも連携し、水の確保を強化しています。

稲・独居高齢者や身体が不自由な方など、発災時の避難にサポートが必要な方の対策として、避難行動要支援者名簿の作成が進められているそうですが…。

神・いち早く避難していただくために、誰がどうサポートするのか、事前に決めて相互に認識していただく必要があります。そのため、市では避難行動要支援者名簿を作成し、消防、警察、民生委員で情報を共有し、発災時には必要な支援が入る仕組みをつくっています。対象の方には市からご案内をして承諾を得た上で、町内自治会、自主防災組織と協定を結び、避難行動要支援者名簿を共有します。情報を受け取った町内自治会では、要支援者の所在の記したマップや、支援方法をまとめた支え合いカードの作成などに使っていただけるようにお願いしています。

稲・土砂災害警戒区域などにお住まいの避難行動要支援者については?

神・令和6年3月時点で、市内合計で土砂災害警戒区域が349箇所、土砂災害特別警戒区域は310箇所指定されています。これらの地域に住んでいる方で重度の障害をお持ちの方など、対象者約4千人については個別避難計画書の作成を進めています。

稲・通常の避難所生活が難しい方について、どのような対策を進めていますか?

神・風水害の受けにくい場所に立つ高齢者施設などと提携し、発災時、通常の避難所では生活が難しい方も受け入れる福祉避難所として利用させていただくことになっています。福祉避難所は令和6年3月末時点で高齢者施設・障害者施設合わせて159箇所を指定しています。

稲・私たちは「自助」として、どのようなことを心がけたらよいでしょうか。

神・その一つとして災害情報を入手することが重要です。千葉市防災ポータルサイトでは災害情報や避難指示などをリアルタイムで入手できるほか、スマートフォンをお持ちの方は、「ヤフー防災」や「NHKニュース・防災」などのアプリを使っていただき、居住地を登録すると情報が得られるようになっています。

稲・まずは自ら情報を取りに行くことですね。

神・そうですね。また、大きな家具は地震で必ず倒れると考えていただき、固定や置場の見直しをお願いします。ご高齢の方やお体の不自由な方は、家具転倒防止器具の設置費用などについて、市から一部助成が受けられますのでそちらもご活用ください。

稲・なるほど。助成が受けられるのはありがたいですね。ところで千葉市のHPにも案内がある政府推奨のマイ・タイムラインとは何でしょう?

神・発災時の一人ひとりのタイムライン(防災行動計画)のことです。いざというとき、自分自身がどう動くか、防災行動を時系列的に整理しておくことで、各自頭の中で想定している行動が共有でき、逃げ遅れを防ぐことができます。ぜひご家族と一緒にマイ・タイムラインを作成してください。

稲・各自の備蓄品についてはどうでしょうか?

神・飲料水や食料のローリングストックをお願いしています。カップ麺や缶詰、ペットボトルの水などをいつもより多めに買って使った分だけ補充していただければ賞味期限対策にもなります。

稲・いつ起こってもおかしくない自然災害への対策には、日ごろからの備えが大切だとわかっているけれど、行動に移せない方も多いのではないでしょうか。

神・その一歩がなかなか踏み出せないという市民の皆さんに、なんとか行動につなげてもらうよう工夫するのが行政の役目ですから、啓発活動などにも積極的に取り組んでいます。そして、これからも市民のみなさんが安心して暮らせるよう「公助」としての防災対策を進めて参ります。みなさんも引き続き「自助」「共助」のご協力をお願いいたします。
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